猫のフィラリア症

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猫のフィラリア症

その病態と対応法について

フィラリア症は,別名「犬糸状虫症」とも言われます。犬以外の動物でも「犬」糸状虫症です。フィラリア(=犬糸状虫;Dirofilaria immitis)が蚊(ヤブカやシマカ)などを介してイヌ科動物の間で伝播し,問題を起こす寄生虫の病気です。
犬糸状虫は心臓内に寄生しますが,それが刺激になり犬の循環器に重大な問題を起こし最終的には心不全に至ります。

一方,まだまだ十分には認知されておりませんが,猫もフィラリア症にかかります。イヌ科動物だけの疾患であると思われていたフィラリア症ですが,実はイヌだけの病気ではなかったのです。
では猫のフィラリア症とは一体どのような病気でしょうか。
犬糸状虫にとって猫は,本来の宿主ではありません。いわば「居心地の悪い」宿主となります。蚊から猫の体内に侵入した犬糸状虫は,成長しながら肺動脈という大血管に至ります。猫の免疫作用によって犬糸状虫は攻撃を受けます。その結果,肺の血管や肺そのものに急性の炎症が発生します。猫は食欲不振,咳,嘔吐,呼吸困難などの様々な症状を示します。初期の症状を乗り越えた猫は,その後安定期を過ごします。犬糸状虫が,猫の体内で2〜3年と,犬に寄生した時に比べて短い寿命を終えると,再び強い炎症や血栓塞栓症(血管内に血の塊ができること)が起こります。その結果猫は急性の呼吸器障害や,突然死に至ります。

これらの症状はフィラリア症に特徴的なものではなく,喘息などとも類似しています。従って,症状だけからはフィラリア症と断定は出来ません。また犬と異なり,猫のフィラリア症では血液中にフィラリア子虫(ミクロフィラリア)が検出されませんし,犬糸状虫の抗原の検出も,虫体の数が少ない場合が多いので困難です。さらに,胸部X線診断でも気管支喘息などと類似した所見が認められます。こういった特徴から猫のフィラリア症の診断は,複数の検査所見と臨床症状を組み合わせて行う必要があります。それでも確証が得られない事もあります。


このように猫に犬糸状虫が寄生した場合には,犬の場合とは全く異なった病態を作ります。ポイントは,
*猫のフィラリア症は呼吸器疾患であるということ(犬は主に循環器疾患)
*診断および治療が非常に困難で,根本的な治療法がないこと
です。

では,どうしたらあなたのお家のねこちゃんをフィラリア症から守ることができるのでしょうか。
答えは「感染しないように予防する」です。犬糸状虫を媒介する蚊は,犬も猫も同じように吸血します。感染リスクは同等であると推定されます。また,屋外飼育でも屋内飼育でもどちらも感染リスクがあります。
従って,適切なフィラリア予防薬の投与が,感染を防ぎます。


正しい知識と対応が,ねこちゃんをフィラリア症から守ります。




フィラリア虫体.jpg当院にて手術で摘出したフィラリアの成虫